小学校に入っても、相変わらず友達はできませんでした。
小学校では同じ幼稚園、保育園同士の友達のグループが出来ていましたし、仲間入りできるような快活さもありません。
それどころか、話しかけられても、舌がもつれて、上手に話すことが出来ずにいましたから、私は休み時間も、教室の片隅でじっと本を読んでいる生徒でした。
家に帰れば、猫がいました。
一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入り、一緒に寝る。
夕方は相変わらず、お店の片隅で本を読んだり、絵を描いたりして過ごしましながら、
店員の女の人の話すのを聞くうち、どんどん、商品に関する知識だけは豊富になっていきました。
やがて、何かを探すお客様を見て、私は接客の真似事をするようになりました。
店員のお姉さん、或いは母親の真似をして、商品の説明までするようになると、小さな子供の姿にお客様はほっこりするようで、積極的に話しかけてくれるようになりました。
「店員さんの真似事をすれば人とスムーズに話すことができる。」
私は、「接客」という仮面をひとつ、手に入れたのです。
それから、徐々に、私は変わっていきました。
上得意のお客様が、土日もお店にいて、時々接客をする私を不憫に思って、遊びに連れて行ってくれるようになりました。近場の遊園地とか、動物園など。
子供のいないご夫婦に連れて行ってもらったこともありますが、一番色々頻繁に連れて行ってくれたのは、
「仕事が忙しくて、恋人を作る時間もない」という会計士をしている30代半ばの男性で、
背が高く、まるで棒のようなスタイルでしたから、私は、「オズの魔法使い」のかかしさんみたいだなあ、とひそかに思っていました。
小学生4年生ごろから、店に立つようになった私を見て、父が、いろんな習い事に、私も連れて行ってくれるようになりました。
父は多趣味な人で、移り気で、私が一緒に行った習い事だけでも
ゴルフ、ウィンドサーフィン、ヨット、スキー、テニス、フェンシング、ビリヤード、などなど。
どれも父に連れられていくだけで、興味は持てませんでしたが、乗馬だけはとても気に入って、乗馬クラブに入会して週に1.2回通っていました。
私が乗馬をすることを知って、その会計士の人は、自分のコネをつかって東京の、オリンピックの馬術の選手に合わせてくれたりして、私にとってやさしい、「あしながおじさん」のような存在でした。
「仕事が忙しくてお金を使う暇がない」というので、帰りには、毎回、ちょっと子供にはどうかと思うような高価なおみやげ・・・アクセサリーとか、をプレゼントしてくれました。
帰って、それを見た母が、
「あの人、私に気があるんだわ。」と言ったのを覚えています。
「将を射んとすればまず駒から、ってね。」
「いやらしい、本当に男っていやらしい。」
人と社交的に話すようになった私に、母も積極的に、自分の内面を吐露するようになってきました。
自分が、私の父親である男と結婚することになったのは、
「お前のお父さんにレイプされたからだ。」という告白をうけたのもこのころです。
「私には、他に結婚を約束した人がいたのに。」と。
「今でも、その人を愛している。」と。
さて、今日はここまでです。
台風がどんどん来て、夏ももう終わりですね。
涼しくなると、嬉しいけど、
私、お客様にお茶をお出しする時の、からんからん、という氷の音が好きなんです。
またしばらく聞けなくなると思うと、ちょっと寂しいですね。
氷にできる、虹を見るのも大好きです♪